戦時中の大谷派の資料置き場

 昭和20年7月に東住吉区田辺に落とされた模擬原子爆弾(5t爆弾)のせいで、恩楽寺の本堂は今も歪んだままです。その歪みのせいで開かなくなっていた蹴込み(押し入れ)を平成27年にようやく整理しました。

 


 

 その中からたくさんの配布用書類がでてきました。

 昭和18年頃戦争中の本山東本願寺や南御堂、北御堂で行われていた「戦争戦殉者追弔法要」「戦時生活精神昂揚大講演会」「明治天皇奉讃大法要」「国難突破大講演会」などなど、各 30枚位ずつの配布用案内書類です。

 


 大変恐ろしいことに、いずれの案内も戦意を鼓舞したり、戦中の生活を昂揚させるようなずいぶん過激な文面の案内です。戦時中、宗教界もまた戦争協力をしていた恥ずべき証であります。

 


 おそらく当寺のご門徒に広く配布するように本願寺大阪教務所や難波別院から送られてきたのでしょうが、当時の住職坊守だった祖父と祖母は思うところあったのか、配布せずに箱に入れて隠すように蹴込みの中に残してありました。

 


 きっと祖父たちは当寺のご門徒に配布することを控えたのでしょう。70年の時を経て、先達からのメッセージを受け取った気分でした。

 誤った道を進んでしまったかつての日本の歴史を重く受け止めて、恩楽寺一同、今後も自らのあり方を問い、精進します。


法名 弘誓院釋法城 俗名 乙部法城 

第24代恩楽寺住職。平成6年2月16日往生。行年76歳。

法名 染香院釋尼妙良 俗名 乙部良子

前坊守。平成24年6月29日往生。行年93歳。



「模擬原子爆弾投下跡地」の石碑を迎えて

私たちは過去において、大日本帝国の名の下に、世界の人々、とりわけアジア諸国の人たちに、言語に絶する惨禍をもたらし、将来ある青年たちを死地に赴かしめ、言いしれぬ苦難の過ちを犯したことを、深く懺悔するものであります。

 

同時に、我が国には、広島、長崎に、アメリカによる二つの原子爆弾が投下され、まことに多くのいのちが無差別に奪われ、筆舌し難い業苦を被りました。

 

この二つの原子爆弾に先立ち、模擬原子爆弾という、原爆投下練習用の殺戮兵器が我が国各地に四十九発も使用され、その内の一つが、昭和二十年七月二十六日、ここ東住吉区田辺にも投下されていました。死者七名が犠牲になり、重軽傷者七十三名、四八五戸の家屋が倒壊しました。

 

この事実は長く歴史に埋もれており、先人がこれを発見し、こうした隠れた痛ましい事実を広く知らしめ、広島・長崎の原爆投下を身近に感じて、この悲劇が繰りかえされないことを念じて、「模擬原子爆弾投下跡地」の石碑を建立し、毎年追悼式を行って参りました。そのように、不戦平和への願いに促されて、その現実に身を捧げておられるあらゆる心ある人々に、深甚の敬意を表するものであります。

 

しかしながら、戦後七十数年、戦争の悲惨さと愚かさに対する人々の感覚は風化していきます。

その風化は、現在も、基地問題で苦しむ沖縄の人たちの心に向き合おうとせず、戦争に向かう状況を生み出そうとしています。

 

かつて二五〇〇年前、釈迦牟尼仏・仏陀は、私たち人間の生きざまを憐れんで、仏教を開闢されました。

 

永い人類の歴史は、人が人を殺し、傷つけ合う悲しみの連続でありました。仏陀の願心は、自我愛を正当化して「賜った尊いいのち」を奪い合うことを悲しみ、私たちに「共に生きよ」と呼びかけておられます。

 

「殺してはならぬ、殺さしめてはならぬ」という仏陀の悲願を受け取り、あらためてここに「非戦の誓い」を表明します。当恩楽寺は、この懺悔の思念を旨として、人間のいのちを軽んじ、他を抹殺して愧じることのない、すべての戦闘行為を否定し、さらに仏より賜った信心の智慧をもって、人類が犯した罪責を検証し、これらの惨事を未然に防止する努力を惜しまないことを決意して、ここに「模擬原子爆弾投下跡地」の石碑を迎え、不戦の誓いを改めて表明するものであります。

 

今日ここに集う私たちは、民族・言語・文化・宗教の相違を越えて、戦争を許さない、豊かで平和な国際社会の建設にむけて、すべての人々と歩みをともにすることを誓うものであります。

 

令和元年六月二日 釋大信


7.26 田辺の模擬原爆 追悼式

開催日時 : 毎年7月26日

場  所 : 真宗大谷派 恩楽寺

       大阪市東住吉区田辺1-14-18

主  催  者 : 7.26田辺模擬原爆追悼実行委員会

模擬原爆は長く歴史に埋もれた存在でした。原爆投下を成功させるため長崎に投下された原爆と同型、同重量の約5トンという巨大爆弾を大量の製造し日本への空襲の中で原爆投下の訓練をしたのです。こうした隠れた事実を広く知らしめ、広島・長崎の原爆投下を身近に感じて、この悲劇が繰りかえされないことを念じて、田辺に模擬原爆が投下された日時に合わせて追悼式を行っています。



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