過慢

同じレベルにあると思われる集団の中で、自分は優れている方だと思い込む作用をする煩悩。

 筆者は少年時代はこんな過慢な態度だった。

「テスト結果は平均点だったけれど、ちょっと予習不足なだけで、僕はその気になってちょっと勉強すれば、あっというまにみんな追い抜いちゃうよ。余裕、余裕」

「こんな試験じゃあ私の本当の力を測れない。審査員が悪い。私はもっとすごい」

 などと試験結果などを謙虚に受け止めないでいた。

 

 【過慢】とは、自己のよくない成績や成果などの客観的事実は根拠がないことだ、と勘違いして無視し、自己の問題点が見えなくなる煩悩である。

 実は過大な自尊心は自信にもなるし行動力にも影響するので、ある程度過慢であることは大切である。

 しかし強く偏りすぎると、自分が評価されないのは周囲のせいだ、という態度になりやすく、能力に起因したミスをしても内外に言い訳ばかりして改善努力を怠る。効率の良い反省ができなくなってしまうのだ。そうして態度を改めない人は人間関係に摩擦を作りやすい。あるいは影で悪口をささやかれるだろう。

 自己を見つめ、他者の声や評価に謙虚に耳を傾けることは大切である。聞法(仏の教えを聞く)する習慣を真宗門徒が大切にしてきた理由が、よく分かる煩悩である。法話というのは説教というくらいだから、反省を促す部分もあるので、過慢でありすぎると、仏法すら聞けなくなってしまうからだ。

この煩悩と似たようなバイアス……自信過剰効果、優越の錯覚、ダニング=クルーガー効果

※筆者について以外の各エピソードは個人を特定できないように、内容を変更しています。